嘔吐下痢症の対処法は?

嘔吐下痢とは?

嘔吐下痢=ウイルス性腸炎=お腹のカゼ

(喉のカゼではないので咳鼻水はほとんどなく、症状は腹痛、嘔吐、下痢です。先生によって表現が違うかもしれませんが、みんな同じことです。)

 

 初冬から春先にかけて2つの嘔吐下痢の流行がありますが、寒くなり始めのこの時期に毎年流行する嘔吐下痢は、ノロウイルスやサポウイルスによるもので、軽い症状なのでご安心を。(ノロウイルスは一時期話題になりましたが、皆さんが思っているほど怖くないのです。まれに重症化する例があるようですが、そのほとんどは免疫力が低下した老人などの場合だけです)

 お子さんに注意が必要な嘔吐下痢症は、冬場の2月〜3月頃毎年流行するロタウイルスによる嘔吐下痢症です。これは高熱と嘔吐下痢の症状がひどく、小さいお子さんがかかると脱水症状をおこし入院が必要になる場合も少なくありません。だからロタウイルスにはワクチンが開発されたのです。ノロウイルスにはワクチンありません。)

 

嘔吐下痢の症状は? 

 嘔吐下痢症(ウイルス性腸炎)は病原ウイルスの経口感染です。ですから、口から入ってまず胃で増殖しますが、そのときに嘔吐がみられます。一定時間(多くは4〜8時間)経過すると胃を通り過ぎて小腸〜大腸にウイルスが到達してそこでウイルスが増殖し、下痢を引き起こします。ウイルスが胃からいなくなると吐かなくなると考えていいでしょう。ということで吐いているときには胃を使わないようにするのが原則となります。ひどい場合は嘔吐しながら下痢がはじまったりすることもあります。こういう場合はもっと慎重に対応する必要があります。

 

吐いてるときはどうしたらいいの? 

 嘔吐下痢症は、はじめは嘔吐や腹痛の症状からはじまります。吐きはじめると立て続けに何回も吐くことが多く、吐く症状はふつう半日程度でおさまります。吐き気がおさまったころ下痢の症状がはじまります。下痢の症状は数日続き徐々に改善していき、病気は回復に向かいます。

吐いているときに水分を与えるとさらに吐きますので、吐き気を抑えてあげることが必要です。吐き気を抑えるには吐き気止めを使います。吐き気止めは坐薬が適しています。(内服の吐き気止めもありますが、吐いているときは薬を飲んでも吐いてしまいます)

 

実際には・・・

吐き気の症状が強いときは、まず吐き気止めの坐薬をいれます。坐薬をいれたら、薬の効果が出るまで約1時間(2〜3時間)くらいかかりますので、その間は水分を欲しがっても我慢させてください。(口をしめらせるくらいの少量であればかまいません)

1時間くらいたって吐き気がないようであれば、まず少量の水分を与えてみます。与え方の基本は“少量を頻回に”です。吐き気がおさまっているから、水分を欲しがるからといってたくさん飲ませると吐きやすいので注意してください。飲ませるものは*経口補水液(OS-1)がよいでしょう。

最初は5cc(ティースプーン1杯)から始めて、これを1〜5分おきに飲ませて下さい。ただし、あまり嫌がる場合は無理をしないで下さい。

母乳(ミルク)栄養児の場合は、母乳(ミルク)を少しずつ何度も与えて下さい。その場合、無理に*経口補水液(OS-1)に変更する必要はありません。

前の薬局におすすめの*経口補水液(OS-1)が売っています。

 

*経口補水液(OS-1)は、塩分と糖分が適切な割合で混ざった飲料水で、嘔吐下痢により失われた水分と塩分がより速やかに吸収され、脱水を改善します。ジュースや白湯など塩分の少ないものばかりをのませるとかえって脱水状態が悪化することがあります。また普通のイオン飲料水も糖分が多すぎて適していませんので注意して下さい。

 

吐き気がおさまったあとは? 

吐き気の症状がおさまった頃から下痢の症状がはじまります。下痢症状の程度は様々ですが、下痢がひどく水分補給が追いつかないと徐々に脱水になってきますので注意が必要です。

 

下痢のときの水分補給は・・・ 

 

                                                        Na             K            Cl        糖質  浸透圧     エネルギー

                             (mEq/l)     (mEq/l)    (mEq/l)     (g/dl)     (mOsm/l)     (kcal/l)

OS-1                       50                 20                50              1.8                 270                 10      

アクアライトORS      35            20                30              1.8               200                 16

ポカリスエット

(成人用)                    21                   5                16.5            6.2                 326                 24

(小児用)                         21                   5                 16.5            4.1                 285                 16

アクエリアス                   11                   2                    -                 5.0                260                 19  

 

下痢のときに飲ませる飲み物のNa濃度は40〜60mEq/l

浸透圧200〜250mOsm/kg、ブドウ糖濃度 74〜111mM/l程度がよいと考えられています。

 

 なぜかというと・・・

  ・Naの濃度が低い飲み物を大量に飲むと水中毒になる危険あります

  ・浸透圧が高い飲み物を飲むと下痢が長引く危険性があります

  ・糖分の高すぎる飲み物はかえって下痢を助長します

 という理由からです。

 

 ですから、上の表のようにスポースドリンクは、電解質濃度が低く糖質が多すぎるので、下痢による脱水の治療には適さないといえます。市販のジュース類は10〜15%も糖を含んでいるため下痢に適さないといえます。

以上の理由で、一番理想に近い飲み物は経口補水液(0S−1)でしょう。 

 飲みやすさを優先すればアクアライトORSでしょう。

母乳は飲ませていいの? 

母乳には、感染症に対して抵抗性の成分と腸管粘膜の修復に寄与する成長因子が含まれているので、実際に急性胃腸炎において母乳を与えた群と与えなかった群を比較すると、母乳群で有病期間が有意に短縮されてという疫学データがあります。

少しずつ休み休み与えてください

 

下痢のときの食べ物は? (最新の食事療法)

 (以前の食事療法)

病原体の感染が原因で下痢を起こしているときには、栄養分を消化・吸収し、水分を吸収する能力が落ちていることが多いといわれていました。そのような消化・吸収能力の低下があるため、下痢があるときには、体の負担を軽減するために、(1)消化のよいもの(BRAT食-バナナ、ライス、リンゴ、トーストなど)を取るようにする、油分の多いものや乳製品は避ける、(2)母乳はそのまま与えてもよいが量は減らすミルクは1/2~2/3に希釈する、などを行うことが推奨されていました。しかし、近年日本などの先進国では急性下痢症が軽症化しています。これには、乳幼児の栄養状態が向上した、早めに医療機関に受診するようになった、母親の脱水症に対する知識が向上した、などの理由が考えられます。これらの軽症化のために以前いわれていたような食事の制限は必要ない、という意見が出てきました。

 

(最新の食事療法)

現在下痢があるときの食事や水分の取り方の好ましい方法としては、以下のようなものがあげられます。

(1)積極的に経口補液療法を行う(組成が以前のものよりうすくなってきている)。

(2)脱水補正後はすぐにいつも通りの食事を与える(早期に食事を再開する)。(3)母乳の量の制限やミルクの希釈は必要ない。

(4)不必要な薬物は使用しない。

今までの治療法に慣れてきた身には多少違和感を感じますが、最近の欧米での治療の流れはこのようなもののようです。日本でもこのような治療法が広まっていくのでしょう。

 

★以前は希釈乳から開始することが多くの場合に好まれてきたけれども、その必要はなく、むしろ希釈乳の摂取によって症状の長期化と栄養状態の回復遅延の原因となることが明らかになっている。

★半固形や固形食をたべていた小児は、下痢の期間中であってもその食事を継続すべき。

★浸透圧負荷が下痢を悪化させることがあるため、糖分のみの含有量が高い食品は避けるべき。たとえば炭酸飲料、ジュース、ゼラチンでできたデザートなど糖分を過度に含む液体を大量に摂取させることは控えるべき。

★高脂肪食品の摂取を避けることが推奨されてきたけれど、脂肪を与えずに十分量のカロリーを維持することは困難であり、脂肪は腸管の運動を抑える有益な作用を有すると考えられる。

★早期から食事を摂取することにより、感染症による腸透過性の変化が抑制され、罹患期間が短縮し、栄養学的に転帰が改善される。

 

リンゴやにんじんに含まれるペクチンは、大腸で細菌により発酵分解を受けて短鎖脂肪酸になり、腸壁からの水分の吸収に促進的に働くことが明らかになり、急性胃腸炎時にはむしろ勧められるべき繊維分であることがわかっています。

 

こんなときは要注意!

2歳未満の乳幼児は、尿濃縮力が不十分であり、年長児と比べて脱水になりやすいので注意が必要です。

  • ・泣いても涙がでない  
  • ・目が落ちくぼんでいる
  • ・唾液がねばっこい 
  • ・顔色が悪い
  • ・ぐったりして元気がない
  • ・吐き気止めを使っ嘔吐がつづく
  • ・緑色の嘔吐がある    
  • ・便に血が混じる

上に当てはまる場合は点滴をした方がよいので病院にかかりましょう。

 

お薬に関して

下痢は細菌やウイルス、細菌の出す毒素などが原因で起こることが多いのですが、下痢止めを使って下痢を止めてしまうと、細菌やウイルス、毒素などがからだの中にとどまり、かえって悪化させてしまうこともあります。

とくにからだの小さい小児の場合には、むやみに下痢止めをのませて下痢を止めてしまうことはお勧めできません。以前、処方された大人用の下痢止めをのませるなんてことはもってのほかです。

 

その他 

下痢でおしりが汚れたままだと、おむつかぶれになりやすくなります。

シャワーや洗面器にぬるめのお湯をためるなどして、おしりをよく洗ってあげましょう。

 

嘔吐下痢のあとに下痢が長引く場合があります 

下痢が遷延するときは、一過性の二次性乳糖不耐症を併発していることが多いといわれています。アレルギー素因の強い乳幼児では急性胃腸炎に引き続いて、いわゆる食物過敏性腸症により下痢が遷延することもあります。