乳糖不耐症とは?

母乳,ミルク,牛乳などには「乳糖」という糖質が含まれています.乳糖は小腸でラクターゼという酵素により「ブドウ糖」と「ガラクトース」に分解されます.ブドウ糖とガラクトースは腸壁から吸収され血液中に移行します.ラクターゼが欠乏すると,乳糖を消化吸収できなくなります.その結果,高濃度の乳糖が腸管内の貯留し液体を引き寄せ,下痢になります.吸収されない乳糖は小腸を通過して大腸に入り,腸内細菌により発酵し,腹部膨満(ガスっ腹)と酸性便(酸っぱい臭いの便)を起こします.このような病態を「乳糖不耐症」と呼びます.

乳糖不耐症には,「先天的」なものと,「後天的」なものがあります.

先天的なものは,ラクターゼが生まれつき欠けているため,母乳やミルクを飲み始めてすぐに酸っぱい臭いの水っぽい便を頻繁にするようになります.脱水症状や発育障害を起こすこともあります.欧米白人は,昔から乳製品を摂取し続けているので酵素活性が高く,乳糖不耐症の人は少ないです.一方,もともと乳製品を摂取する習慣のなかったアジア人や黒人の7-9割は,乳糖不耐症の素因があります.乳児期には母乳やミルクを摂取するためラクターゼの活性が高いですが,離乳とともに酵素活性が低くなります.学校給食等で牛乳を飲んでいる間は酵素誘導が働くため症状が出にくいです.しかし,思春期以降に乳製品を摂取しなくなると酵素活性が低くなり,たまに牛乳を飲んだ時にお腹がゴロゴロするという症状で乳糖不耐症と気付くことがあります.

後天的なものは,ウイルスや細菌による急性胃腸炎に罹患した時に起ります.腸の粘膜がただれて機能が低下し,一時的にラクターゼの分泌が悪くなって酸っぱい臭いの便をするもので,これを「2次性乳糖不耐症」と呼びます.乳糖不耐症の多くはこちらです.

<症状>
小児では,下痢,腹部膨満(ガスっ腹),酸性便(酸っぱい臭いの便)を来します.重症な場合には,体重増加不良を起こします.成人では,腹部膨張,腹痛,下痢,吐き気.腸がゴロゴロ鳴る.乳製品を食べた30分から2時間後に急激に排便します.

 

<対策>
1.一時的に母乳,ミルクを止めてみる.
2.乳糖分解粉乳(ラクトレス,ノンラクトなど)や乳糖分解牛乳(アカディ)に切り替える.
3.医療機関で乳糖分解酵素(ミルラクト,ガランターゼなど)の処方を受け,母乳やミルクを飲む前に服用する.
4.ヨーグルト,乳酸菌飲料(カルピスやヤクルトなど),チーズなどの発酵性乳製品を摂取する.これらの乳製品は,製造過程で乳糖がある程度分解されるので,母乳やミルクに比べ乳糖不耐症を起こしにくい.
5.乳製品を少しずつ繰り返し摂取していると酵素誘導が起こり,乳糖不耐症が軽快することがある.


牛乳を飲むと下痢になる

 

 

牛乳を飲むと下痢になる方、お腹がごろごろする方は、「乳糖不耐症という体質である可能性があります。人によってはお腹の調子が崩れるだけでなく、気分が悪くなったり、お腹の痛みを感じたりします。

 

「牛乳アレルギー」ととても似ていますが、牛乳アレルギーは肌に湿疹ができる、呼吸器系に影響が出る(喘息など)などの影響が出ます。また、幼児の段階で判明することが多いのも特徴です。

 

牛乳アレルギーであれば、血液検査などのアレルギー検査で確定することができます。基本的には牛乳と牛乳を原料とするものを避けるべきとされますが、程度によって対応が異なりますので医師とよく相談するようにしましょう。

乳糖不耐症の原因は、腸に乳糖を分解する酵素が少ない(分泌されない)ことです。この酵素を「ラクターゼ」(乳糖分解酵素)と言います。 

 

乳糖は人間の成長に必要なのものなので、母乳にもしっかり含まれています。赤ちゃんの頃は多くの人の腸で分泌されるので、母乳で育っているときには問題ないことが多いのです。

 

乳糖不耐症の方は母乳から離れたあたりからラクターゼの分泌が減ってしまうのです。

 

歴史的に乳製品とのかかわりが深いヨーロッパの方々には乳糖不耐症で悩む方も少ないのですが、それでも10%程度はいると考えられています。日本を含めアジアではさらに増え、80%以上とも言われています。

 

ただし、自覚症状のある方はとても少なく、給食の牛乳摂取などを通じて特に気にならなくなるパターンも多いようです。

 

乳糖不耐症かもしれない、と心当たりのある方は、無理に牛乳を飲まないようにしましょう。まず、量を減らして様子を見る、市販の「乳糖分解済み牛乳(お腹がごろごろしない牛乳など)を飲んでみてください。

 

牛乳アレルギーと異なる点は、量を減らしたり、加工品を食べたりすれば問題ないことも多いということです。

ヨーグルトは発酵により乳糖が少し分解されているので、食べても問題ない場合もあります。ただし、すべての乳糖が分解されているわけではないので、ヨーグルトも量には注意しましょう。

 

下痢の症状が重い場合には、牛乳をやめて医師に相談するようにしましょう。乳糖不耐症に具体的な治療法や薬はありませんが、本当に乳糖不耐症であるのかをしっかり確認する必要があります。別の食品のアレルギーや、下痢を症状とする病気の可能性もあるからです。

 

乳糖不耐症でない方でも、冷たい牛乳やコーヒー牛乳などを一気に飲めば、冷えも手伝って下痢になりやすくなります。お腹を下しやすい方は少しずつ牛乳を飲むか、温めて飲むなどして工夫してみてください。

 

腸が丈夫であれば、つまり腸内環境が正常であれば、腸が少々ダメージを受けても(細菌やウイルスなどがおなかに入ってきても)、下痢をすることなく元気でいられます。腸内細菌、特に善玉菌がおなかでたくさんの活躍してくれるからです。

 

 

腸内環境をしっかり強化することは健康の秘訣です。腸内善玉菌を増やすサプリメントなどを上手に利用することは下痢の改善、病気に負けない身体作りの早道です。