(みずいぼ)伝染性軟属腫

 

初めに

水いぼは、名前の通り、中に水が入ったように見える1~3mmの丘疹で、体中のどこにでもできます。水いぼといいますが、発疹には水がたまっていないのが特徴です。接触によって感染するため、皮膚の露出の多い夏に流行します。 

 

原因ウイルス 

ポックスウイルスに分類される伝染性軟属腫ウイルスが原因となります。伝染性紅斑の原因ウイルス:パルボウイルスが非常に小さなウイルスであるのに対し、ポックスウイルスは人へ感染するウイルスの中で最も大きなウイルスです。 

 

流行のパターン 

接触によって感染するため、皮膚の露出の多い夏をピークに春から秋にかけて流行します。感染経路はウイルスに触れるとうつる「接触感染」です。直接水いぼに触れなくても、タオルや衣服を介してうつったり、皮膚にあるちょっとした傷や湿疹が原因となって、うつったりする可能性が増します。夏場の共用タオルなどには気を付けてください。ただ、感染力は弱く、プールの水などを介して感染することはありませんので、過度に対応する必要はありません。 

 

症状の経過 

ウイルスは皮膚に接触すると、すぐ水いぼとなるわけではなく、真皮と言われる皮膚のやや深い部分でゆっくり増殖し発症します。このため、潜伏期は概ね2~7週間と幅があります。水いぼの症状は、皮膚限局で、咳や鼻水、下痢や嘔吐などは認めません。発疹は1~3mm大の丸い滑らかな発疹で、よく見ると丘の上にほんの少しくぼみがあるのが特徴です。色はやや光沢を伴い、白っぽい肌色からピンクを呈します。胸部・腋下・肘・膝などから広がる場合が多いですが、体中どこの皮膚でも認めます。陰部にもできます。水いぼの発疹は1個だけということはほとんどなく、パラパラと数個から多い場合は数十個程度認めます。痒みを伴う場合もあり、掻いて水いぼが崩れるとウイルスが飛び散り、あちこちの皮膚にうつります。手の届くところに水いぼができるのはこのためです。皮膚の免疫は広範ではないため、次から次へと水いぼが広がり、沈静化するまで半年から1年程度かかることもありますが、大抵は数か月で治癒します。 

 

診断・治療 

特異的な治療法はありません。皮膚科では、特殊ピンセットを用いたいぼの除去や液体窒素や硝酸銀を用いてウイルスを不活化する直接療法を行うことがありますが、少し痛みを伴うため、小児科では経過を見る場合が多いです。放っておいても数か月から1年くらいで免疫がつき自然に治ります。 

 

2週間程度のヨクイニン内服とスキンケアで治ることもあります。

 

予防など 

ワクチンはありません。放っておいても治るものなので、神経質になる必要はありません。流行時は掻き崩しに注意して、手洗いを励行し、爪を短くしましょう。流行時の共用タオルは避けましょう。掻き崩してしまった場合、数日たってもジクジクしている時は、二次的に「膿痂疹」や「とびひ」になっていることもありますので、病院を受診してください。 

 

学校保健 

夏場の水いぼでは特にプールが問題となりますが、先にも書きましたようにプールの水などを介した感染はないとされています。共用のタオルやビート板などには注意が必要ですが、「過度に神経質にならなくてよい」が今の考え方です。1999年に学校保健法施行規則が一部改正され、「水いぼ」は単に「通常登園停止の措置は必要ないと考えられる伝染病」に分類されました。「原則としてプールを禁止する必要はない」とされています。プールについては、いまだに制限を課す学校や園も多い実情がありますが、疾患をしっかり理解した対応が望まれます。