「熱が出たら抗生剤」は大間違いです!

 

 「熱があるので抗生剤を出しておきます」  ウソです!

 「ばい菌予防に抗生剤をだしておきます」  ウソです!

 

~ 抗生剤とは? ~

  

熱が出る原因には大きくウイルス性のものと細菌性のものに分けられます。

 

抗生剤とは細菌をやっつける薬です。

ですから、細菌には効果がありますが、ウイルスには抗生剤は効きません

急性上気道炎(いわゆるカゼ)の初期の病原体は90%はウイルスで10%が細菌といわれています。

そのためカゼの初期の段階では抗生剤は必要ないことがほとんどなのです。

ただ、最初はウイルスでも、混合感染(ウイルスと細菌の両方の感染)や、細菌感染に変わっていくことがあります。それらの感染から急性中耳炎(鼓膜が赤くなります)や急性副鼻腔炎(鼻水が汚くなります)、喉頭炎(犬が吠えるような変な咳をします)、細菌性気管支炎になったり、重症化すると肺炎(咳がひどくなります)になったりします。

 

初期の時点で抗生剤が必要と思われるのはどんなとき?

細菌の感染または細菌とウイルスの混合感染が疑われる場合です。

  • 鼓膜が赤い場合(中耳炎の可能性があるからです)
  • 喉がすごく赤い場合(溶連菌など細菌の感染の可能性があるからです)
  • 汚い鼻水の場合(初期から細菌の感染が加わると鼻水が汚くなることがあります)
  • 初期から咳がひどい場合(初期から細菌の感染が加わっている可能性があるからです)
  • 百日咳を否定できない場合

    百日咳という病気をご存じですか?百日咳とは百日咳菌という細菌に感染して起こ

   る感染症で、乳幼児期早期にかかると重症化し入院が必要となることもある病気で

   す。(生後3か月から受けられる三種混合ワクチンに百日咳予防のワクチンが含ま

   れているのはそのためです)

   症状は、初期の段階では軽い咳や鼻水の症状しかありませんし、熱も出ず、ウイル

   ス性の風邪と区別がつきません。その後、熱は出ないまま徐々に咳がひどくなっ

   ていきます。もし百日咳であった場合は、症状がまだ軽い時点で抗生剤を飲み始

   めないと、咳がひどくなってからでは抗生剤が効かなくなるのです。三種混合未接

   種もしくは一回しか受けていなくて、百日咳が否定できない場合は抗生剤を飲んで

   いた方がよいでしょう。

 

初期の時点で抗生剤が必要ないと思われるのはどんなとき?

  • 発熱のみで喉が赤いだけの場合
  • 咳の症状がまだ初期の場合(例外;3種混合ワクチン未接種者は必要な場合があります)
  •     ・ 透明な鼻水の場合

風邪の途中から抗生剤が必要になるのはどんなとき?

はじめはウイルス性の風邪であっても、途中から細菌の感染が加わる場合です。

  • 途中から耳を痛がったり、鼓膜が赤くなった場合

  (汚い鼻水になったら要注意で、中耳炎の可能性があるからです)

  • 途中から汚い鼻水になった場合(副鼻腔炎をおこすと鼻水が汚くなるからです)
  • だんだん咳がひどくなる場合(喉頭炎や気管支炎、肺炎の可能性があるからです)

 

ウイルス性の風邪に初期の段階から抗生剤飲んでも細菌の感染は予防できません

抵抗力の低下した子供たちに、細菌が二次感染して中耳炎や肺炎にかかるのを防ぐ目的で抗生剤を処方している医師がいます。これは大間違いです。そうした二次感染の予防効果が抗生剤にないことは、すでに多くの報告で実証されています。

 

「抗生剤を飲むと熱の下がりが早い」という患者さんの訴えをよく耳にしますが?

こんな論文があります。

4歳以上の咽頭炎患者716人を、「抗生剤を処方する群」、「処方しない群」、「3日経っても症状が改善しない場合に抗生剤を処方する群」の3群に振り分け経過観察したところ、症状の改善率や休学・休業期間に関しては3群間ではほとんど差を認めませんでした。この研究のおもしろいところは患者さんに抗生剤を処方したか、処方しなかったかを知らせている点です。抗生剤使用による症状改善率に客観的差を認めなかったにもかかわらず、抗生剤使用患者の8割以上が「抗生剤が有効であった」と主観的有効性を訴えているのです。つまり、抗生剤を処方されてもされなくても症状の改善に差はないのに、抗生剤を処方された患者は主観的に抗生剤が効いたと思いこんでいる点にあります。

抗生剤を処方されることによって心理的に安心し、その結果として症状の軽快速度が同じであっても、「早くよくなった」と感じていることが多い、と読みとれます。

 

耐性菌登場でとびひ、中耳炎が治らない子供たちが急増!!

耐性菌とは、薬に対して抵抗力をもってしまい、薬が効きにくくなった菌のことです。

なぜ耐性菌が増えたのでしょう?

昔も、普通の細菌集団の中に耐性菌はわずかながら存在はしていました。そこに抗生剤を使いすぎることにより、ふつうの菌は一掃され、それでも死なない耐性菌だけが生き残って増殖するという現象が起こったのです。原因は医師があまりにも安易に抗生剤を使い続けたためで、今までのツケがまわってきたのです。

(いまだに熱がある人全員に抗生剤を出す小児科がありますので注意して下さい。このような医者が耐性菌を作り出しているのです。)

 

耐性菌の登場でとびひが治りにくくなっています

 以前はふつうのブドウ球菌が原因でしたが、最近はMRSAという耐性菌によるとびひ

 が増えており、ふつうの抗生剤ではなかなか治らないとびひが増えているのです。

耐性菌の登場で中耳炎が治りにくくなっています

 以前ではふつうの抗生剤で治っていた中耳炎も、最近は耐性菌の影響で鼓膜を切開して

 膿を出しても、その穴がふさがらなかったりするようです。

 

 

 

すぐ抗生剤を処方される先生にはご注意ください! 

   

 

小児科や耳鼻科の先生の中には、必要ないのに抗生剤を処方していることが多く大変困っています。

 

溶連菌の検査をせず抗生剤を内服すると

溶連菌かどうかわからなくなり困っています 

 溶連菌の検査をぜず抗生剤を処方され溶連菌かどうかわからなくなってしまうことが多々あります。一回でも抗生剤を飲んでしまうと、溶連菌でも検査では陽性にならず溶連菌かどうか診断がつけられなくなります。また、熱が出たからといって余っていた抗生剤を飲ませて受診されるお母様方もおられますが、これも診断をつける意味で大変困ります。 

 

汚い鼻水だから抗生剤→間違いです×

また、汚い鼻水がでていると抗生剤を処方される先生もおられますが、必ずしもそうではありません。細菌ではなくウイルス性のRSウイルスやヒトメタニューモウイルスなどでも汚い鼻水はでます。そして、ウイルスが原因の膿性鼻水ですので抗生剤は使わなくても治っています。ほとんどの小児科や耳鼻科の先生方はRSウイルスやヒトメタニューモウイルスの検査はされず、汚い鼻水というだけで抗生剤を処方されております。

 

中耳炎だから抗生剤→間違いです×

咳や鼻水がひどいRSウイルスやヒトメタニューモウイルスは中耳炎を合併する場合がありますが、ウイルスが原因の中耳炎がほとんどですので抗生剤を使わなくても治ります。ヒトメタニューモウイルスは肺炎を起こすこともありますが、肺炎でもウイルス性ですので抗生剤を使わず治っています。

 

なぜ、このように抗生剤の処方に慎重になるのかというと・・・

 

抗生剤を必要ないのに飲んでいたり中途半端な飲み方をしていると、抗生剤に抵抗力を持った耐性菌という抗生剤が効かない細菌だけが鼻の奥などに残ります。そして、その耐性菌が原因の中耳炎などを引き起こすと、なかなか中耳炎が治らなかったり、何度も中耳炎を繰り返すお子さんになってしまします。

 

このようなお子さんにならないように、抗生剤が必要かどうかを判断するのが我々小児科医医の役目だと思っております。ご理解のほどよろしくお願い致します。