熱性けいれん
◆熱性けいれんとは?
生後約4~5ヶ月から6歳くらいまでのお子さんが、38~40℃の高熱を出した際に起こる発作のことです。発熱して1~2日目に起こり、多くは数秒から2,3分で止まりますが、時に数十分~1時間に及ぶことがあります(熱性けいれん重積といいます)。多くのお子さんは一生に一度~数回のみの発作ですが、熱がでるたびに繰り返したり、重積したりするお子さんもいます。
風邪の症状として咳や鼻水があるように、けいれんも症状のひとつです。ですから、何かけいれんの原因となる病気が潜んでいて、その病気のひとつの症状としてけいれんがおこるのです。その原因となる病気はさまざま(例えば髄膜炎、低Na血症など)ですが、そういったけいれんの原因となる病気がなく、ただ単に熱のみが引き金となってけいれんがおこった場合を熱性けいれんといいます。
頻度は、小児の約5% (7~8%) 前後です。
38~40℃の発熱があるときに、
・急に体が固まったようになる
・呼びかけに反応しなくなる
・白眼をむいて目が動かなくなる、一点を見つめる
・手足・顔がガクンガクンと振るような規則的な動きがある
・唇が紫色になる、呼吸が止まる
などといった症状が現れた場合は熱性けいれんを疑います。悪寒(さむけ)はけいれんと間違いやすいですが、ガクンガクンと震えていても、泣いていたり、呼びかけると声を出したり、こちらを見たりするように意識のある場合はけいれんではありません。
◆けいれんが起こっているときはどうしたらいいの?
けいれんが起きたときはあわてず、時計をしっかり確認してどのくらい続くかをチェックし、けいれんの様子(手足の動きはどうか、左右対称か、など)をよく観察し、病院に連れてきてください。舌をかみ切ったりしませんので、何かかませたりしないでください。吐いてのどに物をつまらせないように、けいれんしているときは左側をしたにして横向きに寝かせましょう。はじめてでよくわからないときは病院にお電話ください。
・あわてないこと、おちついて
・衣服をゆるくし、特に首のまわりをゆるくしてください
・仰向けにして顔を横に向け、頭を反り気味にしてください
・吐物、分泌物が口のまわり、鼻の穴にたまっていたらふき取ってあげてく
ださい
・歯をくいしばっていても、絶対口の中に物を入れないでください
(舌をかむことはありません、かえって喉につまらせる危険があります)
・体温を測定し、発作の長さとけいれんの様子(左右差がないか、眼の動きな
ど)をよく観察してください
・もとにもどるまで必ずそばにいてください
熱がないけいれんの場合、年齢が高い(7歳以上)場合、けいれんが止まった後も意識がなかなか戻らない場合、けいれんが左右対称でない場合はてんかんや頭の中の出血、脳炎、髄膜炎など他の病気のこともありますので、検査が必要になります。
以下の場合はすぐ救急車を呼んで病院を受診してください
・10分以上けいれんが続くとき
・短いけいれんが繰り返し起こり、その間の意識がはっきりしないとき
・からだの一部のけいれん、または全身のけいれんでも一部分のみ
けいれんが強いとき
・初めてのけいれんの場合、特に1歳未満のとき
・けいれんが止まったあとも普段と様子が違うき
・唇が紫色になったままで戻らないとき
◆どういうときに起こりやすいの?
熱のではじめが最も多いです。熱がではじめて24時間以内がほとんどです。
実際よく経験する事例として、「熱もなく普通に元気にしていて、突然痙攣をおこし、あわてて病院にかけこんできた。病院についたときはけいれんは止まって元気に泣いており、熱を計ったら40℃あった。」なんてことはよく経験します。けいれんをおこす時期としては熱の上がり始めが最も多いのです。
◆また起こる可能性は?
一般的に、一度熱性けいれんを起こした人が再びけいれんを起こす頻度は30~40%です。ですから、6~7割のひとは一回きりで、その後熱が出てもけいれんを起こさないということになります。ただし、1割の人は3回以上けいれんを繰り返しています。
また、
・初めて熱性けいれんを起こした年齢が1歳未満
・ご両親や兄弟に熱性けいれんの既往のある人
上の2つにあてはまる場合は、再びけいれんを起こす頻度は50%と少し増えます。
◆後遺症は?
熱性のけいれんであれば後遺症の心配はありません。
熱性けいれんを起こすとてんかんになりやすいということもありません。
何回も繰り返すとてんかんにないやすいということもありません。
ただし、
・熱性けいれんを起こす前から発達の遅れがある
・ご両親や兄弟にてんかんの方がいる
・複雑型の熱性けいれんである
◆今後の対応は?
はじめて熱性けいれんを起こした場合
6~7割のひとは人生で一回きりですので、基本的には予防的なことは行いません。
ただし、はじめての熱性けいれんでも、
持続時間が長い(15分以上)けいれんが1回でもあった場合
または
(1)焦点性発作(部分発作)または24時間以内に反復
(2)熱性けいれん出現前より存在する神経学的異常・発達障害
(3)熱性けいれんまたはてんかんの家族歴
(4)生後12ヶ月未満
(5)発熱後1時間未満での発作
(6)38℃未満での発作
のうち2つ以上を満たした熱性けいれんが2回以上反復する場合は、けいれんを抑える坐薬で予防を行います。
◆今後の対応は?
けいれんを予防するための坐薬を、発熱に気づいた時点でおしりから挿入します。この坐薬の効果は約8時間持続します。次に8時間後にもう一度坐薬を入れて、けいれんの再発を予防します。2回使えば、けいれんの起こりにくい時期になりますので、それ以降は熱が出ていても使わなくてよいでしょう。
◆解熱剤の使い方について
熱冷ましの坐薬を使う場合はけいれん止めの坐薬を入れて30分以上あけてください。
抗けいれん薬の持続投与という予防法もあります。
・37℃代の熱性けいれんを2回以上起こしたことがある場合
・けいれんが長く続いたことがあるおこさんで、けいれんを抑える坐薬の予防
投与を行っているにもかかわらずうまく予防できない場合
上のどちらかに当てはまる場合は、飲み薬の抗けいれん薬を、普段元気なときも毎日飲んでけいれんを予防するという予防法を行います。
◆いつまで予防するの?
・通常2年間、もしくは4~5歳になるまでを目標に行います。
◆予防接種は受けられるの?
熱性けいれん児に対する予防接種(ガイドラインより)
要注意因子 1.初回の発作が1歳未満であった
2.一親等に熱性けいれんをおこしたひとがいる
3.部分発作、または発作の持続時間が15~20分以上、また
は24時間以内に発作を繰り返した
4.神経学的異常がある(発達の異常など)
5.両親・兄弟に無熱性のけいれんをおこしたひとがいる
上記1~5のどれにもあてはまらず、今までの発作の回数も2回以内の場合ふつうに予防接種がうけられます。
発作後2~4週間あけて受けた方が望ましいですが、緊急の場合は受けてもさしつかえありません。
風邪薬や喘息の薬の中には、けいれんを誘発するものがありますので
熱性けいれんをおこしたことがある6歳以下のお子さんは注意が必要です。
下記の薬はけいれんを誘発する恐れがあります。
熱性けいれんをおこしたことのある6歳以下のお子さんで、下記の薬を処方された場合は服用しないことをおすすめします。
当院では処方しておりませんのでご安心ください。
テオフィリン製剤・・・
(テオドール・テオロング・テルバンス・スロービットなど)
喘息のお子さんに処方されている場合があります
フマル酸ケトチフェン・・・
(ザジテン・ケトテン・ケトチロン・サジフェンなど)
鼻水がでているときに処方されます
マレイン酸クロルフェニラミン・・・
(ポララミン・フェニラミンなど)
鼻水がでているときに処方されます
耳鼻科の先生はご存じないことが多いので、服用前に確認して下さい。
小児科の先生でも処方される先生がおられますのでご注意下さい。